ELEKIT



ポータブルオーディオの普及に伴いエレキットが初めて挑戦した、真空管ハイブリッドポータブルヘッドホンアンプ(TU-HP01)がユーザーに受け入れられ、せまる更なる期待。社内外からの期待、期待、期待!さあ、次のアンプはどうする?これ以上ユーザーの心をつかめるものは作れるのか??

そんな難題、次のヘッドアンプの開発を託された藤田芳継と右田政俊が出した答えは「半導体アンプでありながら真空管テイストを持ったポータブルヘッドホンアンプ」。 長年愛されてきたエレキットの真空管の音を大切にする精神はそのままに、回路構成をディスクリートとし、エレキットらしさを保ちつつ、音の分離の良さやドライブ能力の向上を目指して作った機種の商品コンセプトや開発にかけた思いを二人に聞いた。
藤田芳継 TU-HP02の開発担当者
電子回路設計のプロフェッショナル。この人なくしてエレキットなし。真空管アンプのほとんどは藤田の設計による。
右田政俊 TU-HP02部品選定に携わる
オーディオルート担当営業マン。若いときからオーディオに精通。弊社アンプの最終音決めの要。右田のOKなしに世に出ることはない。
藤田祥大朗 インタビュアー
新人営業マン。大学時代にロックバンドでベースを担当。ただの音楽好きからオーディオマニアへ進化中。

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アンプとは何か

右田:オーディオ信号は元々微弱なので、スピーカーやヘッドホンを駆動できるように、電力と電圧を増幅してあげるものがアンプ。

藤田:スピーカーでもヘッドホンでも、振動板を機械的に動かす為にはかなりのエネルギーがいるので、信号を力強くしてヘッドホン・イヤホンの振動板を動かす物ですね。

右田:もっと高音質で聞きたいとか、もっと駆動力のいるヘッドホンを使いたい時に、ヘッドホンアンプを中にかませる。 プレイヤーの中にはヘッドホンアンプが内蔵されているから、iPodやsonyのウォークマンなどはDockコネクタを使って内部のアンプをスルーして、DACから出た音を直接取り出した方が音は良くなる。

藤田:そういうやつがない物でも、ヘッドホン出力からアンプを通すと良く聞こえるいうのは、不思議ではあるんですよ。ヘッドホンは結構重い負荷なので、プレイヤーに内蔵されているアンプのドライブ能力が低いと多少歪む。ドライブされるものがヘッドホンではなく、アンプの入力だとほとんど無負荷に近いから、内蔵されているアンプの特性も歪まずにほぼ100%の能力を発揮できる。十分な力強いドライブを外部のアンプに任せれば、プレイヤーのヘッドホン出力からでも結構いい音が出るということ。

祥大朗:元のオーディオプレイヤーの性能を引き出した上で、ちゃんとドライブする。そういう事があるんですね。

藤田:だろうね。でないと外に余計な物をつないで、いい音が出るわけがない。


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TU-HP02のコンセプト

右田:エレキットはオーディオに関しては真空管をメインに作ってきたところがある。 今回のTU-HP02はディスクリートで行こうと考え、次にエレキットらしさである真空管アンプのような音作りを考えた。 そこで入力部分にFETを使ってそのFETに三極管特性を持たせたディスクリート方式のアンプに行きついた。

祥大朗:それはやっぱり、真空管アンプを作ってきたからこそ、真空管的な音作りをするということですね。

藤田:一番苦労したのは、初段に使うFETは何を使うかということ。
昔からオーディオに使われていたのは、今はほとんど無い。だから今入手できるものを取り寄せて交換しながら音を聞いて、どれを使うかと。。。

右田:音響用でいい物なんか一つもなかったよ。

藤田:1つ決めかけたけど、最後にC社にもあるぞ!と。ただね、1種類しかない。C社はトランジスタにしてもFETしても音響用はマイナーなメーカー。
そもそも接合型のJ-FETというやつは各メーカーとも種類がほとんどなくて手に入るものは限られている。その中で「C社もあるやん!」と。
1種類しかないし、「C社かぁ・・」という感じで、それでも手に入るものは一応聞いてみようと。それが最高。最後に取寄せたのが。。。

祥大朗:どれくらいのFETの種類を試したんですか?

藤田右田:10種類くらいかな。
藤田:もうどうせ手に入らんけど・・・と、1980年代のオーディオ用FETも含めて。最初はそれがよかったんよね。で、それがレファレンスになって、これを超えるものはないかと。今手に入るやつで、これと同等かそれ以上のものはないかと思って探していた。

祥大朗:それは試作機が残っているならいつか試聴してみたいですね。

藤田:特性が違えばバイアスとかも替えないといかんからね。大変やったばい。

右田:そう、アナログは大変なんですよ。デジタルみたいに0か1かじゃないから、その中間のところで、勝負しないといけんから。



藤田:で、測定して何か傾向が分かるかというと、どのFETもだいたい測定値は一緒なんよ、バイアスを合わせれば。二次高調波の出方も一緒やから音質はほとんど一緒やねって思うけど、耳で聞いたら全然違う。だからこれはやっぱりFETの選択は耳で聞いてみらないかん。

右田:どれもそうなんよ。音だけ聞くと、低音がしっかり利いているとかハイあがりに聞こえるとか、データでは分からんと。聞いてみらんと。

藤田:カタログ値ではほとんど分からん。データがすばらしくいいからといって、音がいいとは限らない。データがよければ音がいいという事になれば、真空管アンプなんて全然ダメということになってしまう。

右田:半導体アンプの歪みなんかは0.001%とかあるけど、真空管アンプでは低いところで0.1、音を大きくすると平気で数%とか。その数%が真空管アンプの「味」なんよ。その数%のところに二次高調波というものが含まれている事が多くて、電気的に言えば「歪み」、でも音楽の世界では「倍音」にあたるので気持ちよく感じる。

藤田:半導体アンプの場合は二次高調波というのは、ほぼ出ない。で、三次とか五次とか奇数高調波が出るけど、それがひどくなった状態がいわゆる音が「割れる」という事。出ちゃいけない。

右田:だから半導体アンプは歪み率を低く低く抑える。

藤田:そう、だから半導体アンプは測定器みたいな特性になるわけ。だけどそれは水で例えると、いわゆる蒸留水や純水といったもので、おいしくないし、下手したらお腹をこわす。ミネラル分が多少入っていた方がおいしく感じる。混じっているものがミネラルなのかゴミなのか、それが「良い歪み」なのか「悪い歪み」なのかってこと。

祥大朗:「良い歪み」は真空管アンプにどういったメリットを与えているんですか?

藤田:例えばボリュームを上げて歪みが出始めると、半導体アンプの場合は音が割れてしまってバリバリ聞こえる。だけど真空管だとほとんど二次高調波、つまり「良い歪み」なので歪んでいるように聞こえない。歪んでいるけど、ボリュームを上げてもきれいないい音に聞こえるから、逆にいうと出力の低いアンプでも歪ませながらボリュームを上げられるのでそうは聞こえない。

右田:同じくらいの出力の半導体アンプと真空管アンプを比べると、真空管アンプのほうがパワーが大きく感じられるんよ。

藤田:真空管アンプは波形が潰れながらも平均エネルギーが大きく出せるってこと。

祥大朗:TU-HP02もボリュームを上げたら歪みは変わったりしますか?

藤田:HP01もHP02も出力アンプは半導体なので、ボリュームを上げすぎて出力付近で歪む場合は奇数次高調波が出てしまう。ただ、特にHP02の場合は最大出力はすごい余裕があるので大丈夫。大きく歪むまでボリューム上げたら耳の方がおかしくなるかも。

右田:それと、こだわったのはね、コンデンサを入れる場所。
電源回路というか電圧を供給するラインのところに電解コンデンサを入れてやる。まず電源全体のインピーダンスを落としてやる。それで音の切れ、アタック感などが変わるから。

藤田:それで低ESRコンデンサを使った。どんな部品でもLCRの成分がある訳ですよ。どんな部品でもその三要素はある訳。でもコンデンサはその中でも、ほとんどCの成分。でもLの成分もRの成分も絶対そこに寄生するわけ。抵抗でも、すごく小さいながらも容量成分もコイル成分も絶対ついている。だって電線一本、リード一本全部LCRがある。だからプリント基板でもそれはついて回るから。
音声信号ではほとんど問題ないような事も、たとえば携帯電話の周波数ぐらい高い高周波になると全部計算しなきゃいけなくなる。プリントパターンの太さや長さから、その使われている絶縁材用の誘電率とか全部計算しないと特性がでない。オーディオの周波数ではそこまでは考えないけどね。



右田:次に、セパレーションを良くするっていうのは、これも電源のインピーダンスがむちゃくちゃ重要で、右と左のアンプに対して電圧を供給する部分をコンデンサにするイメージ。インピーダンスをいくら下げようとしてもそのESR以下には絶対にならない。電源の大元(おおもと)に一つ入れるか、さらに左右のアンプそれぞれの近い所に分けて入れるかでまた音が変わるから。

藤田:左右分けて入れたとしても、一番電流を食うところにピンポイントというか、そこを狙って入れるのが一番効果的。そこに気を使いました。でも、オペアンプになっちゃうとなかなかそういう事はできません。

右田:デュアルタイプのオペアンプになったら、電源は共通で供給するような形になるから、電源を左右分離することができない。そこがセパレーションの面で不利になる。
だからシングルタイプのオペアンプを2つ使ってそれぞれの電源を別供給で使った方が絶対にセパレーションの面ではいい。
普通のスピーカーを鳴らすオーディオアンプだったらあんまり気にならないと思うけど、ヘッドホンアンプはそれが無茶苦茶気になってくる。

藤田:スピーカーアンプだと多分、スピーカーを2つ並べて1つの部屋の中で聞くから、例えば右の音が左に少し洩れていたとしてもほとんど気にはならない。ところがヘッドホンは右耳左耳と別々に聞くから、ちょっと分離が悪いと気になる。

右田:グランドラインの使い方やね。左右の音をなるべく共通のグランドラインに通さないようにするといい。

藤田:本当は電池も右と左で別々の方が理想的。なかなかそうはできんばってん。

祥大朗:ゲインの切り替えはどんな時に使うんですか?

藤田:普通はHigh。据え置き型のCDプレイヤーとか出力レベルが大きいものはLowで使う。

右田:電池駆動なので、入力電圧の許容範囲が狭い。大きなレベルの信号が入ってくると、そこで途端に歪んでしまう。

藤田:逆に言うと、再生機器がポータブルのものだと電池を使っているから電源電圧が低いでしょ。その範囲でしか信号が振れないわけで、出力電圧は低い。だからゲインの設定はHighでいいわけ。



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なぜ乾電池を使うのか

藤田:リチウムイオンだと、決まった規格というのがないでしょ、乾電池みたいに。
デジカメでも何でも仕様によって違うじゃないですか。予備を買っておこうとすると平気で5000円とかかかるわけですよ、買っても他に使えるかというと使えないし。

右田:メーカーによっては交換してもらわないといかんしね。

藤田:充電式にすると充電池と充電回路も付けないかんから値段も高くなる。
なので、今回は単3になりました。TU-HP01では電池寿命を考えると単3を使いたかったんやけど、あのケースに単3が入りそうで入らない。ほんのちょっと、1~2mm厚くしたら単3が入るのにねってところで単4だったけど、今回のTU-HP02では少し厚くして単3にしました。

祥大朗:一回り大きくなりましたもんね。

右田:今回は電池の寿命も考えて大きくしました。

藤田:それに伴い、前は丸い形だったものをケース屋さんに相談して四角いケースにしました。

右田:そう、うちはまずケースありき。

藤田:丸いとね、ケースの端っこまで使えないんだよ。効率が悪いし、基板をえらく狭くせないかんのよ。



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おわりに

右田:ポータブルヘッドホンアンプは、プレイヤーと一緒に持って歩く使い方とは別に、プリアンプや音源機器のチェック用に使えるから、本当に便利なんよ。
以前はプリアンプをチェックする時、パワーアンプにつないでスピーカーで音出ししてやってたけど、結構面倒くさい。プリアンプの調整だったら、これにつっこんでピって音のチェックとかもできるし。

祥大朗:それはパワーアンプの代わりとして使うってことですね。

右田:そうそうそう、それがめちゃくちゃ便利なんよ。これはぜひおすすめしますね。オーディオマニアの方に。

祥大朗:そうですね、チェック用機材としてマニアの方にはすごくおすすめですね。

右田:TU-HP02はノイズも少ないから、調整する音源やアンプのノイズを聞いたりと使える。
自分のスタイルにあったいろんな使い方をしてみてほしいですね。


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ディスクリートポータブルヘッドホンアンプ
TU-HP02

信号経路にオペアンプ等のICを使用せず、
個別の半導体デバイスで組み上げたディスクリート構成を採用した
ポータブルアンプ。

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