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ELEKIT ELEKIT
インタビュー

25thANNIVERSARY
SPECIAL INTERVIEW

インタビュー

ボディのパーツを選んで作れる工作キットは、自分らしさを知る良いきっかけになると思います。

慶應義塾大学 SFC研究所・所長

田中 浩也さま

Tanaka Hiroya

PROFILE

1975年生まれ。京都大学総合人間学部卒業、東京大学大学院工学系研究科博士後期課程修了。博士(工学)。2005年慶應義塾大学環境情報学部専任講師、2008年同准教授。2010年マサチューセッツ工科大学建築学科客員研究員。2011年アジア初となるファブラボを鎌倉に開設。2012年慶應義塾大学SFC研究所ソーシャルファブリケーションラボを設立。2016年より慶應義塾大学環境情報学部教授を務める。

田中 浩也さま

―イーケイジャパン本社の隣にある「ファブラボ太宰府」設立のきっかけとなった「ファブラボジャパン」の創設者でもある田中さんですが、そもそもファブラボ(※)を作ったきっかけは何ですか?

慶應義塾大学でデジタル化されたものづくりの教育研究に携わっていたのですが、社会や暮らしの中にはなかなか浸透していないことが私にとっての課題でした。そこで研究開発の拠点とは別に、世の中に広めるための場所や仕組みを作りたいと思い、同じ概念の空間としてファブラボを提案している人を訪ねて渡米しました。

※ファブラボ 多様な工作機械を備えたオープンな実験工房の世界的ネットワーク。市民が自由に利用できるのが特徴。

― その人を訪ねたきっかけは何だったのでしょう。

マサチューセッツ工科大学(MIT)のニール・ガーシェンフェルド教授の著書で、『ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』 というのがあり、そこでファブラボを作ることの意義が紹介されていて。ニール氏に師事すれば、私の理想に近い新しい視点を持った環境を生み出せると思いました。MITの研究員時代は、ファブラボについて学ぶ以外にも20カ国くらいを旅して様々な国のものづくりの現場を調査しました。

 

コメント

取材ではアジア初となるもうひとつのファブラボつくばの設立者である相部 範之さんにも同席いただき、お話を伺うことができた。
2011年に最初のファブラボである鎌倉とつくばが誕生して以来その数は増え続け、現在は20カ所に及ぶ。

― 多彩な経験を積み重ねファブラボ設立に至ったのだと思いますが、そもそも田中さんが電子工作に興味を持ったのはいつからですか?

小学校に入る前から電子機器を分解したり、ちょっとしたものを修理したりしていました。幼少期、1980年代はまだものの少ない時代でしたから…父親の教えでもあるのですが、基本的にものはなるべく買わずに作りなさいと育てられていました。また、あるものは修理して長く使いなさいと教えられましたね。

― エレキットで遊んでいたのもそのころからですか?

そうです。豆電球をいくつか用意してランプを作ったり、ハンダ付けの工作キットを色々と作ったりしましたね。エレキットで印象深いのは、お湯はりの際に、あふれないように教えてくれる、お風呂ブザー。あれは、すごく便利だと母親に喜ばれました。当時、対照的だった思い出もあるんですが、父親は趣味でアマチュア無線の資格を取っていて、家にトランシーバーなどの電子機器がたくさん置いてあったのですが、よく母親から邪魔だと言われていましたよ。子供ながらに、誰かの役に立つものでないと駄目なんだなと思いました。

― ユーザーの声は絶大ですね(笑)。子供のころは、電子工作以外にも興味はありましたか?

小学校低学年まで電子工作をしていましたが、パソコンが出始めたころからそちらに夢中になりました。マイコンBASICマガジンを見ながら、自分でプログラミングしたゲームで遊ぶのが楽しかったです。あと、私は札幌市出身なのですが、小学校が終わってから北海道大学のマイコンサークルへよく遊びに行っていました。小学校には、好きなデジタルの話ができる人が少なかったので大学生に話を聞いてもらっていたんだと思います。

― そういった経験から、年齢を問わず同じ趣味仲間と集まるコミュニティに惹かれるようになったんでしょうね。

というより、昔からものづくりの活動はもっと開かれたスペースでできたらいいのになと思っていました。またファブラボ鎌倉を通して感じたことは、工作機械と専門外の人とが出会うことによって本当に新しいものが生まれるということです。例えば、レーザーカッターとママが出会って子供向けのハンドメイドグッズ集団 “ファブママ”が生まれたり、3Dプリンターと訪問看護師が出会って“ファブ看護師”が生まれたりなど、意外な組み合わせだからこそ生まれたコラボグッズが面白いと思うんです。

― コラボグッズと言えば、エレキット×アーティストによるロボット・ファブウォーカーの共同開発者・山岡さんは、SFC研究所のお隣の研究室にいらっしゃるそうですね。

はい。山岡さんのファブウォーカーは、あの養老孟司さんがうちの研究所に来た時に、小枝で作られたロボットを見てすごく褒めていましたよ!「日本のロボットの考え方は西洋とは違う。森羅万象のスケール感というか、自然と一体化していて素晴らしい!」と感動していました。

― 自分で好きなものを選べるように、4足歩行のロボットの足はあえてキットに入れてないんですよね。

そうそう、エレキットはボディのパーツを好きなもので作れるのも魅力ですよね。養老さんが驚いていたのは足を小枝にしたものでしたが、自分で見つけて来た小枝ってそれぞれ長さも違うから、すごく個性的ですよね。自然のものと機械が合体しているところも面白い。ロボットの動く動画を見ていると、本当に世界観があって引き込まれてしまいます。

― アート性のある工作キットを作っていくということも私たちの展望のひとつではあるのですが、今後もっと挑戦してほしいことはありますか?

工作キットやおもちゃと言えば、昔から大人のできることをソースとしたものが多いように思いますが、大人もやったことのないような未知の世界へ連れて行ってくれるものを生み出してほしいと思います。それにはどうしても若い力が必要だと思うので、子供を中心にものづくりを考えることをもっと一緒にできたらと思います。

コメント
カッコ

25周年のお祝いメッセージ

思えば、私の創作意欲がエレキットを作った時の喜びで支えられていたのだと分かり感謝しかありません。
お風呂ブザーを作らせてもらいありがとうございました!そして今「イーケイジャパン」のグループ企業である「グッデイ」から協力していただき、子供たちを中心に未来のものづくりを考える『ファブ 3 Dコンテスト』をやらせてもらっていますが、色んな活動を通して一緒にまちを盛り上げていけたら嬉しいです。

ファブ 3 Dコンテスト
https://www.fab3d.org/

慶應義塾大学 SFC研究所・所長

田中 浩也さま